仙台青葉クリニック

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デンタルコラム

15 口腔育成プロジェクト

シリーズの最終回にあたり,東北大学歯学部付属病院において新時代に向けた臨床教育モデルとしてスタートした「口腔育成プロジェクト」を紹介しておきたい.

前にも触れたが,厚生省と日本歯科医師会が推進している「8020(ハチマルニイマル)運動」は,80歳で20本の歯を残そうというキャンペーンである.そこには,「一生自分の健康な歯で食べることができるようにしよう」という歯科保健活動の本来的な意味が込められている.しかし,現在は51歳で20本,80歳でわずか4本しか残っておらず,目標値にはほど遠い状況だ.

「年をとったら歯は抜け落ちるもの」「歯科とは虫歯などの疾患にかかってから世話になるところ」と思っている人は,国民の中ではまだ多数派を占めているであろう.8020を意義あるものと真剣に考えるのであれば,これらの国民的認識を変える必要がある.と言っても,これはさほど大げさなことではない.現代歯科学の世界水準では,虫歯や歯周病を予防して一生自分の歯で食べることは絵空事ではなく,実現可能なものになっていることを知っていただくだけでよいからだ.以下に述べる「口腔育成プロジェクト」は,まさにこのような認識を原点にすえ,さらに歯の長期維持を妨げる恐れのある不正咬合への対応をも組み入れた総合戦略である.

「口腔育成」とは,1997年に東北大学で生まれた用語で,「子供たちの口腔システム全体を対象に,その健全な機能とかたちを生涯にわたって維持することができるように,予防を主体とした長期管理を行い,同時に子供たちの口や歯に対する保健意識をはぐくむこと」を意味している.具体的には,次のような目標を設けている.①乳歯列から管理を開始し,20歳までに虫歯や歯周病がなく,健全な歯列やかみ合わせを備えたゴールを達成する.②生活環境をも視野に入れた管理を行う.③治療中心ではなく,ケアをより重視した長期管理を進める.④虫歯や歯周病に対する感受性を調べ,個別に科学的予防策を施す.

これまで,子供たちの口の疾患に対しては,主に予防歯科,小児歯科,矯正歯科による独立分業制の治療や管理が行われてきた.「口腔育成」では,虫歯や不正咬合の有無に関わらず,全ての子供たちの口腔全体を健全に育成するためのチーム医療を目指し,同時に,そのような考え方と実践能力を備えた歯科医を育てることを志向している.このプロジェクトは立ち上がったばかりで,まだ実効は上げていないものの,「口腔育成」の理念に基づいてケアを受けた子供たちは,いずれ20歳になり,いずれ80歳になる.その時には8020は楽に達成されているはずである.

河北新報「みんなの健康」新時代の矯正歯科 1999年1月〜5月(15回連載)

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